組織の変革は、新しいシステムを使う、新しいプロセスを導入する、新しい人事評価を適応する、新しい考え方を取り入れるなど、社員に様々な変化をもたらします。
ときには、望まない異動、降格、リストラなど、大きな痛みを伴う変化もあります。
変化が大きければ大きいほど、その変化を乗り越えるのは簡単なことではありません。
チェンジマネジメントは、そのような変化を社員がいち早く受け入れられるよう支援し、変革を成功に導く手法です。
今回は、そのチェンジマネジメントにおいて、変革計画をたてるときの考え方の基盤になっているチェンジカーブについて、チェンジカーブとは何かとフェーズごとの対策について解説します。
チェンジカーブとは
チェンジマネジメントの起源は、行動心理学や社会心理学です。人間が変化に対してどのように反応するのか、どのように対処すれば変化をスムーズに受け入れ生産性を高めることができるのか、という学術的な研究から生まれました。
そんなチェンジマネジメントに大きな影響を与えたモデルは、精神科医のキューブラー・ロス「悲しみを受け入れるプロセス」です。彼女のプロセスをもとに、多くの研究者、ビジネススクールの教授、コンサルタントが、チェンジカーブ(チェンジジャーニーやトランジションカーブ、トランジションモデルとも呼ばれます)という人が変化を受け入れる心理的プロセスをモデル化しました。
チェンジカーブの段階
チェンジカーブには、いくつかの心理的な段階があります。
否定 | 変わらなければいけないという事実を否定する |
怒り | 変わらなければいけないことに対して怒る |
抵抗 | 変わらなければいけないことを阻止できないか抵抗する |
落ち込み | 「変わらなければいけない」ことが、動かしようのないことを知り落ち込む |
受け入れ | 変わらなければいけないことを受け入れ始めます |
試み | 徐々に新しい状態で何かできないか試み・探索します |
発見 | 新しい状態での喜び・楽しみ・やりがいを見つけます |
統合 | 変化を日常として取り込みます |
例えば、組織の再編で自分の事業部がなくなり、全く畑違いの仕事につかなければいけなくなったという状況になったときを例にご説明します。
- 全く予想していなかった衝撃の事実に、最初はそんなことはあり得ないと否定します。
- 経営陣の判断ミスで事業部の業績が悪化したのに、なぜ自分がこんな目にあわなければいけないのかと怒ります。
- 今の仕事を離れなければいけないという現実を何とか回避できないのか抵抗します。
- どうにもならないことを知り落ち込みます。
- 仕事を続けていくためには事実を受け入れなければいけないと考え始めます。
- 新しい仕事で何ができるのか探索し始めます。
- 新しい仕事でもやりがいを発見します。
- 新しい仕事を自分の日常として取り込みます。
必ずしもすべてのケースにおいてすべての人がこの段階を経るわけではありません。変化の大きさや種類、個人の変化に対する柔軟性などによって、通る段階は変わります。
外部環境の変化で働き方が変わった、会社で電子化を早急に進めなくてはいけない、チームマネジメントの形が変わったなど、社員にとって大きな変化が起こったとき、多かれ少なかれ人はこのようなフェーズを経ることを前提に、チェンジマネジメントでは計画を立てます。
チェンジカーブのフェーズごとの対処法
対処法を考えるにあったって、必ず考慮しなければいけないのは、同時に同じことが起こっても、人によって適応の速度が違うこと。
例えば、コロナ感染拡大で外出制限を強いられたとき、新しい状況に慣れずストレスを抱えている人もいれば、「ピンチはチャンス!」とばかりオンラインなどで新しいことを始め、新しい世界に果敢にチャレンジしている人もいました。
そして、その人がいるフェーズによって、必要としているものが異なるという事です。
例えば、ショックや混乱のフェーズにいる人たちにとって重要なのは、正しい情報を伝えること。
怒りや抵抗を感じている人たちが必要としているのは、誰かに傾聴してもらい、共感してもらうこと。
当協会のチェンジマネジメント基礎講座では、チェンジカーブの各フェーズでどのようなことをすべきかを体系化し、人が変化を受け入れるための対策をわかりやすく解説しています。
これらの対策は、仕事、プライベート、個人、組織に関わらず有用です。
自分のチームに何か変化があったとき、またご自身に変化があったとき、今チェンジカーブのどこにいるのか、周りの人たちはどこにいるのか、少し意識してみてはいかがでしょうか?