組織のトップが間違った選択をしようとしているのをみたら、あなたならどうしますか?

声を上げて間違いを正すでしょうか?
それとも沈黙を守るでしょうか?

多くの組織が「会社で生き残りたければ、調和を乱さないこと」という暗黙のメッセージを発しています。そのため大抵の場合、社員は問題に気付いても沈黙を守ります

これを「組織の沈黙(Organizational Silence)」と言います。(モリソン&ミリケン (2000)) エンロン事件や東芝の不正会計問題は、この組織の沈黙によって起こったと言えるでしょう。

私が以前参画した業務改革プロジェクトも「組織の沈黙」により失敗しました。その改革は、全社横断型の難易度が高いプロジェクトであるにもかかわらず短期間で達成することが求められました。開始当初から、誰もが「失敗する」と思っていましたが、声をあげる社員はおらず、結局、スケジュールは当初予定の1年から3年に延び、予算は大幅にオーバーし、業務改革にもつながらないまま終わりました。

組織変革において「沈黙」は成功を阻害する要因になります。

「組織の沈黙」はなぜ発生するのか?

組織学者のモリソン&ミリケン(2000)によると、組織の沈黙の原因は次の2つです。

1.上司が部下からの否定的なフィードバックを恐れ、それを避けようとする。そのフィードバックを間違いだと退けたり、情報源の信頼性を疑い非難する。

2.上司が以下のような偏見を持っている。
・部下は自分のことしか考えていない、信頼できない。
・部下は物事をよくわかっていない。
・反対意見は組織の調和を乱す。

これらによって「沈黙の風土」が形成され、多くの社員は、問題や懸念点を上げるのは労力の無駄である、調和を乱すことによって自分のポジションが危うくなると思い、声をあげません。

「組織の沈黙」による弊害

対処できる段階で課題が表に出ないことにより、手遅れになってから問題に気付き、失敗する確率は高くなります。

また沈黙の風土は、社員のモチベーションにも影響します。自分たちが意思決定に関われないこと、言いたいことを言えないことにより、働く意欲がなくなる、会社への不信感が募るというようなことが起こります。さらに、「意見を述べると気まずい雰囲気になるのではないか」「否定されるのではないか」と恐怖感、不安感が増し、イノベーティブからは程遠い企業文化が根付く要因になります。

「組織の沈黙」を破るには

変革プロジェクトにおいて、リーダーが率先して意見を言いやすい風土を作ることが成功率を上げる近道になります。

具体的には、

・ネガティブなフィードバックを無意識に避けようとする人間の特性に意識を向け対処する。

・異なる意見を、否定せず受け入れる。

・アンケートなど社員が匿名で意見を言えるような仕組みを作る。

等です。

(冒頭に述べたプロジェクトとは別の)あるCEO直下の改革プロジェクトでは、部長レベルをリーダーにすると、どうしても忖度しドラスティックなことができないということで、若手の課長数名をリーダーに据え、改革を推進する体制にしました。

CEOには「課長たちがたとえ稚拙な提案をしても、否定せず話を聞いてください」とお願いし、プロジェクト内で言いたいことが言える空気を作る工夫をしました。

結果、今まで出てこなかったような革新的なアイディアが実施され、このプロジェクトは大きな成功を収めました。

組織の沈黙を破るのは簡単なことではありません。ですが、それを達成したときの効果は絶大と言えます。皆さんの参考になれば幸いです。