コロナ感染拡大対策として広まった在宅勤務をきっかけに、多くの企業が人事制度の見直しを検討・実施しています。その中で特に議題に上がるのが、ジョブ型雇用へのシフトです。

日本は「メンバーシップ型」(個々の従業員の業務を細かく定めず、幅広い職種を体験させる)の雇用が主流ですが、在宅勤務でも管理できるようにと、職務定義書で社員の職務を明示し、達成度合いなどをみる「ジョブ型」雇用に切り替え、脱・時間管理を図るというのが主な狙いです。

日本企業の風土である働き方を欧米で主流のジョブ型に変えるのは、ただ仕組みを変えるだけでなく、日本人の働き方、チームワークの在り方、文化、価値観を変えることなので、非常に入念なチェンジマネジメント計画が必要です。

そこで、チェンジマネジメント手法を使った場合、人事制度の改革をどのように計画するか分析してみました。

 

チェンジマネジメントフレームワークの基本的な考え方

チェンジマネジメント計画では、変革プロジェクトのフェーズを次の5つのフェーズに分けて、フェーズごとに施策を策定します。

1.気づき:変わらなければいけないことに気付くフェーズ
2.理解:どのように変わらなければいけないのか、変化が自分にとってどのような意味があるのかを理解するフェーズ
3.受入:新しいやり方、ルール等をトレーニング、トライアル等で手を動かして実行し始めるフェーズ
4.適応:新しいことを実業務、日常生活に適応するフェーズ
5.維持:前の状態に戻らないように気を付けながら、新しいことを維持し続けるフェーズ

フェーズごとに施策・想定される壁・解決策のテンプレートがあるため、そのテンプレートを使いながら、次のように計画を具体化します。

 

気づきのフェーズの計画

施策:社員の中で、今変わらなければいけないという気持ち(Sense of Urgency)を醸成する。

このフェーズでは「今絶対に変わらなければいけない」ということを社員に認識してもらうためのコミュニケーションを行います。

想定される壁:社員の「今のままでもいいんじゃないか」という考えや、数年後の会社より今の業務、会社全体より自分の業務を考える近視眼的な考え。

解決策:現状の問題点を説く。今回のケースの場合、現状のままだと在宅勤務の社員を管理できず、会社にマイナスの影響を与えるということをできるだけ具体的に伝えます。

そのコミュニケーションには、ロジック(数字等の客観的な情報)とエモーション(ビジョンなど人の心を動かすもの)を織り込むと効果的です。

 

理解のフェーズの計画:

施策:新しい人事施策が個々の社員にとってどのような意味があるのか、各社員に何を期待しているのかを伝える。

想定される壁:未来(=新しい人事制度を導入している姿)は、目に見えないため、不確実でもろいものに思える。

解決策:未来像をわかりやすいシナリオで伝え、どのように変わるのかの理解してもらう。そのとき会社視点ではなく、受け手の視点から変更点を伝える

伝言ゲームにせず、変革推進者が現場まで赴き、伝えるべきことが社員全員にきちんと伝わるようにする

 

受け入れのフェーズの計画

施策:ジョブ型のやり方を実際に業務で使ってもらい、意識改革を促す。

想定される壁:個々の役割・責任をあいまいにすることで組織の不調和が発生することを避けてきた日本の文化。慣れ親しんだ文化が心理的な弊害となり、役割・責任を明確にするジョブ型の受け入れを妨げる。

「自分のやり方は正しい」というプライド。新しいことを導入するときの不快感を受け入れられない。

「長時間働いている=頑張っている」のような今までの評価基準、価値観。

解決策:管理職向けのトレーニングを実施。具体的な例を使いながら、ケースごとにどのように対応すべきか、想定される課題と対処法など、管理職がすぐに業務で使えるような情報を提供しトレーニング。

減点主義にせず、失敗しても大丈夫という空気を作る。必要に応じて管理職に対してコーチングを行い、ジョブ型を受け入れられるようにサポートを行う。

 

適応・維持のフェーズの計画

施策:ジョブ型を導入し、実際にやりながら学ぶ

想定される壁:導入後、会社・変革リーダーが、変革プロジェクトは完了したとみなし、現場で起きていることを気に留めなくなる。

解決策:導入後の現場の状況をアンケート、フォーカスグループインタビュー等で継続的に把握。収集したフィードバックを考慮し、必要に応じて是正措置を行う。完全に定着するまでモニタリングし続ける。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

このチェンジマネジメントフレームワークは制度の改革だけでなく、システム導入、プロセス変更、オフィスの移転など、様々な組織内のチェンジマネジメント計画で使えるものです。

よろしければぜひ一度使ってみてください。