近年管理職向けのチェンジマネジメント企業研修のご相談が増えています。管理職の方々にチェンジマネジメントの知識を身につけていただくことが変革成功への近道だという認知が広まってきていることを実感します。

そこで今回は、組織変革における管理職の重要性とその役割、そして管理職の方々に変革を推進していただくために、どのような準備が必要なのかをお伝えいたします。

 

組織変革における管理職の重要性

組織変革において、管理職の存在は非常にクリティカルです。変革の成功は管理職にかかっていると言っても過言ではありません。

IBMの調査によると、変革の成功において最も重要な要素のひとつに「変革に対する管理職の当事者意識」が挙げられています。また、マッキンゼーの調査では、変革の失敗の原因の33%は「管理職が変革を支持していなかったから」という結果が出ています。

現場で変革を導入する従業員にとって管理職は一番身近なリーダー。その管理職が変革に対して受け身の姿勢を取れば、従業員もそれに倣います。管理職が変革に抵抗すれば、従業員は上司の態度に反発することはできないでしょう。上司が変革の成功を信じていなければ、従業員がその成功を信じることは難しいでしょう。

そのため、管理職の振る舞いが、従業員の言動に大きく影響し、その結果、変革の成果に大きな影響を及ぼすのです。

管理職の役割

変革における管理職の役割は大きく4つあります。

  • ロールモデル:変革に対する行動や考え方のお手本となる
  • ガイド/水先案内人:自組織がどこに向かうのかを指し示す
  • コミュニケーター:変革が各従業員に与える影響やベネフィットを伝える
  • サポーター:従業員が自信をもってあるべき姿に向かえるように支援する

ロールモデル

先に述べたように、従業員は管理職の変革に対する考え方や行動を見ています。管理職が変革をネガティブに捉えていれば、その態度は従業員に影響し、変革の成功を信じていなければ、従業員も成功しないだろうと考えるでしょう。

そのため、管理職が変革の成功を信じ、自分事として積極的に変革を進める姿を見せることが、従業員にポジティブな影響を与えるのです。

また、企業文化のように形が見えないものを変える変革においては、最初は各従業員の「新しい文化」に対する従業員の解釈と、組織が目指すしているものが異なるという事が発生します。例えば「チャレンジ」を新しい企業文化として掲げた場合、各従業員が思い描く「チャレンジ」と、企業が目指す「チャレンジ」が最初から完全に一致することがありません。具体的な事例、業務で実際に「チャレンジ」を体験しながら、少しずつすり合わせが起こり一致していくのです。このようなときに、上司が「企業が目指す「チャレンジ」」を日常業務の中で体現する、具体的な例で伝えていく、などを重ねることは、従業員の理解を促進します。

ロールモデルは変革には欠かせない要素であり、従業員に一番身近な管理職が日々その姿を見せることが最も効果的です。

ガイド/水先案内人

人はどんなにやる気があっても、どこに向かっているのか、どのような道筋で進むのかがわからないと前に進むことができません。

組織の長である管理職が、あるべき姿を指し示し、何をどのように変えるのか、どのようなアプローチで進むのかを明確にすることで、組織変革は加速します。

コミュニケーター

従業員は上司から変革が自分に与える影響を聞きたいと思っている

会社のトップがどんなに変革の必要性を唱えていても、従業員がそれが自分にとって具体的にどういう意味があるのかを理解できないと「変わらなければいけない」という意識は芽生えません。

従業員に自分事意識を芽生えさせるためには、変革が自分の仕事にどのように影響するのか、自分の役割はどう変わるのか、自分にとってどのようなメリットがあるのかというような個々人の今後に関する情報は、上司が伝えるのが最も効果的なのです。

そのため、管理職がコミュニケーターという役割を担うことは変革の成功にはなくてはならないものです。

サポーター

大きな変革であればあるほど、人は変化に対して不安を抱きます。新しい状況で今までのように業務がこなせるのか、新しいスキルを身につけることができるのか、評価システムが変わっても今までのように評価してもらえるのか、本当に変革を導入することができるのか・・・

今までの慣れ親しんだ業務なら、全体を把握していて自分で業務コントロールできますが、まだ形のない未来に対してはコントロールのしようがありません。

未来の自分に自信が持てないと、従業員は現状維持に固執し、変わることを拒みます。

それを防ぐためには、変革は成功する、変革後の業務でも活躍することができると自信をつけさせ、前に進んでもらう必要があるのです。

そのために上司のサポートが欠かせません。

変革後の業務で何を期待しているかをきちんと伝え、ゴール設定をし、どのように達成するか、コーチングを通じて、従業員を支援していく必要があります。

管理職の方々に変革に備えてもらうために

このように変革において重要な役割を担う管理職の方々には、変革活動が本格的に始まる前に、準備を整えてもらう必要があります。

そのためにやるべきことは何か?

ギャップを埋めることです。

変革の問題の要因はギャップ

多くの変革において、問題を引き起こす要因となるのは次のようなギャップです。

  • 期待値のギャップ:組織の期待値と本人が想定する期待値とのギャップ
  • コミュニケーションギャップ:関係者間での情報のギャップ
  • スキルギャップ:必要なスキルと今持っているスキルのギャップ

管理職の方々に力を発揮してもらうためには、それらのギャップを未然に防ぐことから始まります。

変革における管理職の役割および管理職への期待値を伝える

変革で自分のグループや自分自身がどのような成果を出す必要があるのか、何を期待されているのかを理解してもらう。

管理職に必要な情報を提供する

管理職がチームと共にあるべき姿を目指すために必要となる情報(新しい体制、制度・ルール・プロセス、企業文化など)をできるだけタイムリーに透明性をもって伝える。

管理職がその業務を遂行するために必要なスキルを提供する

実業務を遂行するためのスキルだけでなく、コーチングやメンタリングのスキルなど、変革推進や部下のサポートを行うために必要なスキルを提供する。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

変革を現場で導入する従業員にとって最も身近にいるリーダー、管理職は変革の成功の要です。

管理職の方々に変革における役割を理解してもらい、変革が始まる前に、期待値を理解してもらい、必要な情報をタイムリーに提供し、必要となるスキルを身につけてもらうことが、変革の成功の鍵です。

ご参考になれば幸いです。