チェンジマネジメントを行う上の基本のキは、主要関係者をできるだけ早い段階で計画に巻き込むことです。
しかし、具体的にいつのタイミングで誰をどのように巻き込むかは、状況によって異なります。
今回は、ハーバードビジネススクールの教授ジョン・コッターとレオナルド・A・シュレジンジャーが提示した論点をベースに、関係者の巻き込むときに考慮すべき「状況を表す変数」を使って、どのようにプロジェクトのアプローチを決めるのかをお伝えします。
関係者の巻き込むときに考慮すべきポイント
コッターとシュレジンジャー(1979)は、変革の導入アプローチやプロジェクト計画は、以下の「変革の状況を表す変数」を踏まえて、策定すべきと述べています。
1.緊急性
早急に変革を導入しないと、組織を多大なリスクにさらすことになる場合、Directive(指示型)アプローチを取らざるを得ません。関係者の巻き込みは時間がかかるため、変革への抵抗や導入後の混乱をリスクとして許容し、リスク軽減策に注力すべきです。
2. 変革後の状態(目指す姿)の明確性
どのようなアプローチをとるかは他の要素に依存しますが、この要素だけに限ると、最初の段階から「変革後の状態(目指す姿)」が非常に明確な場合、Directive(指示型)アプローチのほうが簡単です。
反対に、プロジェクトが始まった段階では目指す姿が明確でなく、プロジェクトの中で調査などを行いながら、徐々にあるべき姿を定義する場合、目指す姿の策定のために関係者からの情報提供やフィードバックが必要になるため、Collaborative(協同型)アプローチが効果的です。
3. 想定される抵抗の大きさ
想定される抵抗が大きければ大きいほど、変革推進者は、関係者に変革の必要性を理解してもらうための説得に労力を費やさなければいけません。そのため、抵抗が大きくなることが想定される場合は、Collaborative(協同型)アプローチが推奨されます。
4. 変革に必要な情報を変革推進者・チームがどの程度持っているか
現場の業務に関する情報や取引先への影響など、変革のデザイン・導入に欠かせない情報を、変革推進チームがどれだけ持ち合わせているかによってアプローチを変える必要があります。関係者が持っている情報なしに進められないのであれば、Collaborative(協同型)アプローチを取らざるを得ないでしょう。
5. 関係者が変革推進者を信頼しているか
関係者の変革推進者への信頼が高ければ、関係者は変革の方向性を受け入れる準備ができていると言えるでしょう。しかし、まだ関係者の信頼を得ていない状態であれば、まずは関係者を活動に巻き込み、信頼関係を構築したうえで、彼らの変革活動へのコミットメントを引き出す必要があります。
6. 変革の成功が「関係者の変革へのコミットメント」に依存しているか
関係者が自発的に変革活動に携わるか否かで変革の結果が大きく変わるのであれば、Collaborative(協同型)アプローチが必要です。
フェーズによってアプローチを変える
プロジェクトのフェーズもアプローチを検討するときの重要な要素です。
例えば、プロジェクト開始前の段階では人を巻き込まず準備を進め、その後の課題設定フェーズや目指す姿を構築するフェーズで巻き込む人を増やす。さらにその先のプロジェクト計画を策定する段階ではより多くの人を巻き込むなど、6つの変数を考慮しつつ、関係者をいつどのように巻き込むのかを計画します。