組織の中で何かを変えるとき、新しいツールやプロセスを導入するとき、
最も難しいことのひとつが、

人の変化への抵抗をやわらげ「変わろう」と思ってもらうこと、
そして、変化を自分事としてとらえてもらうことです。

チェンジマネジメントの手法では、人の変化への抵抗をおさえ、変化を前向きにとらえてもらえるように、人を動かすコミュニケーションを事前に計画・準備します。

そのコミュニケーション計画をたてるときに必ず押さえる以下の3つのポイントをお伝えします。簡単に実行できるものばかりですので、ぜひ実際の現場で使ってみてください。

効果的に伝えるデリバリーの3つのポイント

  1. 視覚情報を使う
  2. 繰り返し伝える
  3. 双方向コミュニケーションを心がける

視覚情報を使う

人間の脳は文字情報より視覚情報(画像情報)を好みます。写真や画像を用いたプレゼンテーションは、文字と言葉だけのプレゼンテーションに比べて6倍以上記憶に残りやすいという結果が出ています。

数値情報は表ではなくビジュアルチャートを使う、感情に訴えかけるメッセージを伝える場合は、そのメッセージを象徴する写真などを使うことが効果的です。

数値情報の例:表のみ vs グラフ化

表だけの場合

感情に訴えるメッセージの例:文字だけ vs イメージ

文字だけの場合
イメージがある場合
視覚情報を効果的に使った例(日本マクドナルド)

2013年に日本マクドナルドの社長に就任したサラ・カサノバさんは、経営においてコミュニケーションがどれほど重要かを理解されていて、非常に戦略的にコミュニケーションを活用されています。2014年のマクドナルドの品質問題や業績悪化で、社員が自信を失っていたとき、社内の求心力を高めるためにインナーブランディング(社内向けブランディング)を取り入れ、V字回復を達成されました。代表的なのは「マクドナルドスタッフ100人が踊るダンス映像」を全社会議の場で流すという施策。クルーが一丸になるために一生懸命踊っている映像は、心動かされる感動的なものでした。

参考リンク:日本マクドナルドの信頼回復とビジネス転換へ 全国のクルーがダンスで一体化(広告会議)
https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201709/creative-pr/011302.php

繰り返し伝える

「この間きちんと説明したのに、なんど同じことを言わせるんだ」と感じた経験はありませんか。伝えたことがうまく相手に伝わらないということは、人間の特性上、どうしても起こりうることなのです。

そもそも、人間一度聞いただけでは、なかなか伝達者の意図を理解できません。なぜなら、人はそれぞれ異なる前提(知識、経験、価値観等)を持っており、同じ情報を受け取っても、異なる解釈をするからです。

また、人間には「認知バイアス」という思考や判断の偏りがあり、無意識のうちに、「自分に都合の悪い情報を無視してしまう」、「利益を得るよりも損失の回避を優先する」など、間違った認知をしてしまうことがあります。

さらに、人間は忘れる生き物です。調査によると、人はプレゼンテーションを聞いた1時間後にはその内容の50%を忘れ、8時間後には75%、24時間後には90%を忘れるそうです。

自分の意図通りに相手に伝えるのは難しく、またいったん伝わってもその内容のほとんどが忘れてられてしまうということを前提に、大切なことは何度も何度も繰り返し伝えるということが重要です。

なぜ今変わらなければいけないのか、そんな当たり前に思える情報でも、1、2カ月経って確認してみると、メンバーが各々違う認識を持っていたということは、往々にして起こりえます。そのようなことがないように、キックオフ、全社会議、部会・課会、ニュースレター、説明会、社内のポスター等、様々なコミュニケーションの機会を活用して、定着するまで何度も繰り返し伝えることが効果的です。

双方向コミュニケーションを心がける

双方向のコミュニケーションは労力がかかるため、ついつい一方方向のコミュニケーションをしがちですが、双方向のコミュニケーションは、以下のような様々なプラスの効果があります。

受け手の理解が深まる

受け手が抱く疑問、懸念に答えることにより、受け手の視点で情報をかみ砕くことができるので、自然と理解が深まります。

自分事化される

人は誰かに何かをさせられることを嫌います。他人が決めた「新たな何か(チェンジ)」を受け入れるということは本能的に避けたいと思うものなのです。受け手からのフィードバックを受け入れることで、「チェンジ」がその人の計画にもなり、自分事化されるという効果が生まれます。

やる気が出る

人間は行動しているうちにやる気が出るという特性があります。これを「作業興奮」と言います。行動することで、脳の側坐核という箇所が刺激を受け、やる気ホルモンのドーパミンが分泌されます。例えば、ダイエットのためのエクササイズや家の掃除など、最初は面倒でやる気が出なかったけど、やっているうちに楽しくなってきたということはありませんか。それは作業興奮が働いた結果です。「チェンジ」のために発言する・情報提供する行動が、「現状のままでいいのに」という冷めた状態から、「何かやってみようかな」という気持ちが切り替わるトリガーになるのです。

質疑応答の場を設ける、アンケートやインタビューを実施する、1対1のミーティングで意見を聞くなど、一緒に計画するなどの双方向コミュニケーションを行うことで、驚くほど良い結果につながるはずです。まずは実施しやすいところからでもはじめてみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

  1. 視覚情報を使う
  2. 繰り返し伝える
  3. 双方向コミュニケーションを心がける

というシンプルな3つのポイントで、効果的にメッセージを伝えることができるようになります。ぜひ試してみてください。