組織の変化・変革を推進する際の大きな課題は、変化に対する関係者の自分事意識を高め、変化を受け入れる姿勢を醸成することです。多くの企業はこの段階をどのように克服するかで悩んでいます。

最近では、これに対処する手段としてワークショップ、オフサイトミーティングなど日常業務とは違う所で関係者が議論をする場が活用されることが増えています。ワークショップは、情報の共有、新しいアイデアの創出、目標に対する共通認識の形成において非常に強力なツールです。

  • 普段の業務ではなかなか話せない本質的な話ができる
  • 双方向のコミュニケーションで理解が深まる
  • 様々な視点で議論ができ、新たなアイデアや視点を生み出せる
  • お互いの状況や考えを理解することができる

などの効果があります。

一方、「ワークショップでのディスカッションは盛り上がるが、その後の行動につながらない」「日常業務に戻ると熱量が下がる」というお悩みを伺うことが少なくありません。

そこで今回は、企業の変化・変革において自分事意識を醸成し、参加者の意欲を高めるためのワークショップ設計の5つのヒントをご紹介します。

達成したい成果を明らかにする

ワークショップを「楽しいイベントだった」「普段話さない人と交流できて良かった」だけで終わらせないためには、ワークショップで生み出したい成果を明らかにすることが必要です。この成果とは、ワークショップ実施直後の結果ではなく、ワークショップ後、参加者が業務に戻ってから生み出してほしい成果です。通常、ワークショップ実施後3~6か月を短期的成果のマイルストーンに設定します。

例えば、ワークショップの目的が「中間管理職層に変革のビジョンを理解してもらい、自分事意識を高めてもらう」であった場合、成果は「理解してもらう」だけではありません。業務の中で、変革に関して部下にポジティブなメッセージを伝え、自分事意識を高める、ロールモデルとして部下の手本となる、チームの変革をサポートする、そしてその結果変革が前に進むというようなことが期待する成果でしょう。

可能であれば、ワークショップ実施前とその後を比較できるデータ(サーベイなど)を準備し、成果の効果を可視化できるとよりよいでしょう。

参加者の現在地を明らかにする

チェンジマネジメントの実践において、ワークショップは変化を促すためのツールです。変化を促すためには、参加者の「現状」と「未来の状態(ワークショップ後の状態)」と明らかにし、そのギャップを洗い出ます。そして、そのギャップを埋めるためにワークショップで何をすべきかをデザインします。

そのために、参加者の現在地を明らかにします。参加者は今、組織の変化・変革に対してどのような状況にありますか?変革をポジティブに捉えていますか?抵抗を感じていますか?変革の理由や目的、影響を十分に理解していますか?

参加者の現状によっては、先に定義した「達成したい成果」を一度のワークショップで生み出すのは難しいかもしれません。参加者の現在地を明らかにすることで、無理なく現実的なワークショップをデザインできます。

現状の情報収集は、可能であればサーベイやインタビューの情報を使うと良いですが、公式な声を拾うことが難しい場合は、普段の雑談など非公式な形式で収集した声を参考にするのも良いでしょう。

3つの項目で目的を整理する

現在地が明らかになったら、目的(ワークショップ後に望ましい姿)を以下の3つの領域で整理します。

  1. 認知: 変化・変革にコミットするために知っておくべき情報や知識は何か?
  2. 感情: 変化・変革に対してどのような感情を抱いてもらうか?
  3. 行動: 変化・変革を推進するためにどのような行動変容を起こしてもらいたいか?

認知

変化・変革にコミットしてもらうために知っておくべき情報・知識は何でしょうか?

自分事意識を醸成する段階では、変革の必要性や組織の目指す姿、変革が参加者にとってどのような意味があるのかなどを理解してもらうことが重要です。

ワークショップをデザインする際には、このような情報をどうやって参加者に認知してもらうかを考える必要があります。人間は人から言われたことよりも、自分で考えたことを言葉にして発信する方が自分事として捉えることができます。そのため、チェンジ推進チームから一方的に発信するのではなく、参加者自身が考え、発言できるような「問い」を投げかけることが効果的です。

例えば、参加者に変革リーダーとしての意識を高めてもらいたい場合、「ロールモデルとするリーダー像」について参加者同士で最初に共有し、そこで挙がってきた「リーダー」の要因を参加者全体で共有します。これにより、自分で感じたことを発言するので、押し付けられる感覚なく受け入れられやすくなります。

感情

自分事意識が醸成されていないという段階では、ある程度の人数の参加者が変革に対してニュートラル(様子見)またはネガティブな状態でしょう。その感情をポジティブに変え、変革を進められると感じてもらうことが目的になるのではないでしょうか。

感情を変化させるためには、ワークショップのトピックをハード面(システム・プロセス・戦略等)だけにするのではなく、ソフト面、つまり参加者の価値観や大切にしているものなどに触れる内容を織り込むことが鍵となります。

行動

変革を推進するために必要な行動は何でしょうか?どのような行動変容が必要でしょうか?ワークショップが「楽しかった」で終わらないようにするためには、期待する行動を明確にし、それを促す設計にする必要があります。そのためには、ワークショップ内で具体的なアクションに落とし込み、それを実行する人を明確にすることが大切です。また、そのアクションをフォローアップし、計画通りに進んでいるかを確認する仕組みも必要です。

楽しいと感じさせる設計にする

組織の変化・変革のためのワークショップとなるとシリアスになりがちです。しかし人間は、眉間にしわが寄っている状態ではなかなかクリエイティブにはなれません。人は