組織で何かを変えたい。社内の抵抗にあって変革がうまくいかない。関係者が積極的にプロジェクトに参画してくれない。そんな悩みに答えるため、チェンジマネジメントの観点から、解決策「計画的な根回し」についてお伝えします。
変革の失敗の理由は「人」
様々な調査では変革の50-75%が失敗していると言われています。その失敗の主な理由は「人」です。
・現状に固執する人たちの激しい抵抗
・関係者の自分事意識の欠落
・部署間・組織間の利害相反による反発
・関係者で合意形成がなされていなかった
・旗振り役がいなかった
など、失敗のパターンの本質は、実はどの変革プロジェクトでもあまり変わりません。
失敗のパターンは決まっている。だから事前に計画する
業務改革、システム導入など組織内で何かを変えるとき、スケジュール、人員、タスク等の計画をたてられると思います。
でも、失敗の最大の原因である「人」に関する計画は、それらに含まれているでしょうか?
チェンジマネジメントでは、「人は変化を嫌う」ということを前提に、抵抗があることを想定して人に関する計画を立てます。
いわば計画的な根回しです。
発生可能性の高いリスクに事前に計画し、リスクを最小化します。
計画的な根回しの5つのステップ
計画的な根回しは次の5つのステップで進めます。
- 変革のゴール、なぜ変えるのか、何を変えるのかを明確にする
- 関係者を洗い出す
- 関係者の中で影響力が大きい人を抽出する
- 影響力大の関係者の関心事項・懸念事項を分析する
- 根回しの対策を考える
変革のゴール、なぜ変えるのか、何を変えるのかを明確にする
関係者を巻き込むためには、ゴールや変わらなければいけない理由が、彼らの視点で納得感があるものでなければいけません。
設定しているゴールが組織にとって最善か、変わる理由がファクトに基づいているか、裏付けとなるデータはあるかなど客観的に妥当性チェックをすると説得力が増します。
また、変革を急ぎすぎていないか、組織文化を考慮したタイムラインになっているか、というのも確認ポイントです。人が変化に適応するには時間が必要です。急ぎすぎるとストレスを感じ、抵抗が発生します。
どうしても急がなければいけない場合は、強制力が必要になります。影響力が強い人を巻き込むなど、トップダウンアプローチを前提とした計画が必要です。
関係者を洗い出す
ゴールを達成するために必要な関係者を洗い出します。実際に活動を行う現場のメンバーだけでなく、そのメンバーに対して影響力がある人たちも含めます。
関係者の中で影響力が大きい人を抽出する
「この人は押さえておかないと、後でちゃぶ台返しが起こる可能性がある」と思われる影響力が大きい人たちをリストアップします。
影響力大の関係者の関心事項・懸念事項を分析する
関心事項、懸念事項の分析は、多面的に考慮する必要があるので、できれば複数のメンバーでブレストをすることをお勧めします。
検討チームに十分な情報がないという場合は、関係者の方々や関係者に近い方々にインタビューを実施し、ニーズを探るのもよいでしょう。
根回しの対策を考える
影響力が大きい関係者の関心事項・懸念事項を軸に対策を考えます。
変革のゴールや変わらなければいけない理由が、対象者1人1人にとってどういう意味があるのかを考えていただくと対策により厚みが増します。
抵抗への対策は早ければ早いほどいい
この5つのステップをご説明すると「こんなことしなくちゃいけないの?」「ここまでするのは大変」という声が上がることがあります。
そのときには「対策を打たず変革を進めたら、うまく進みそうですか?」と伺っています。
「うーん、抵抗にあうだろうな」
と、いう答えをいただいたときに、お伝えするのは、
人を巻き込むには、早い段階のほうがいい、ということです。
人は、自分のアイディアに反対しません。
計画段階でキーパーソンをきちんと巻き込むことで、変革を自分事ととらえてもらうことができます。
逆に、一旦ネガティブに振れてしまった人の気持ちはなかなか変わりません。自分にとってマイナスの活動をしているという認知バイアスがかかり、変革の活動をネガティブフィルターを通してみるようになるからです。また、一旦「反対!」と声をあげると、後で「悪い活動ではないな」と思っても、最初の意見を取り下げるのは、人間の心情的に難しいのです。
そのため、計画的な根回しは、最初の段階で行うことが非常に有用と言えます。
計画的な根回し、参考になれば幸いです。