

事業内容:医療用医薬品等の研究・開発・製造・販売・輸出入
従業員数:1,632名(2025年9月現在)
皮膚科学領域を専門とする製薬会社として、医療用医薬品等の研究開発や製造、販売などを手がける、マルホ株式会社。2022年に会社のミッション・バリューを刷新し、それに基づく長期ビジョンを策定。その実現に向けた施策の一つとして、人事制度の変更に取り組んでいます。
今回、日本チェンジマネジメント協会の柊が、チェンジマネジメント応用コース(現:プラクティショナー養成コース)を受講された人事総務部長の後藤礼子様、人事総務部の前田裕美様と岡博之様の三名にインタビュー。これまで変革に直面する人々の内面にきめ細かく配慮しながら取り組んできた皆様が、改めてチェンジマネジメントをチームで体系的に学ぶことで、どのような気づきや学びがあったのか、組織変革の取り組みと合わせて、伺いました。
一部の変革から、組織全体の変革へ━━ チェンジマネジメントに対する意識を揃える必要性
―― 御社が取り組んでいる変革の内容について、概要をお聞かせください。(柊)
後藤様:2020年、現社長の杉田が代表取締役社長に就任し、新体制の下、2022年に経営理念と呼んでいるミッション・バリューを刷新しました。そしてその考え方を戦略や施策などに落とし込む長期ビジョンを作成し、さらに現在は、長期ビジョンを確実に実行するため施策の一つとして人事制度の変更に取り組んでいます。新たな人事制度は2026年の10月からスタートさせる予定で、今は準備段階です。
柊:講座を受講いただいたのは、新しい人事制度の設計が始まる前のタイミングということですが、そのタイミングで受講をされた背景について教えていただけますか?
後藤様:新たな理念やそれに伴う長期ビジョンなどを作ってきたそれまでの間は、先頭を走るリーダーやコアメンバーが変革の土台をゼロから生み出し、展開するというフェーズでした。しかしここからは、すぐには変わりきれない人も含めて変わっていかないといけない、描いた絵を形にして真の変革を実現していかないといけないフェーズです。
進む道は恐らく簡単ではありません。みんながやりたかったことに向かっていることを確認しながら、ときにはつらい脱皮を伴いながら前に進めていく必要があります。そのためには、組織変革に対する考え方を、変革を引っ張っていく側、つまり私たち自身が持っていないと、人と組織をリードできないという思いがありました。
今回の講座を共に受講した二人は、ミッション・バリューを実現するために導入する、新たな人事制度を一緒に設計するメンバーです。表面的に制度を変えるだけではなく、それを本当に血が通ったものにするためにはどんなマネジメントが必要なのか、どのようなプロセスを経て人や組織は変わっていくのか、考え方や意識を揃えるためにも、私を含め人事を担当する二人と一緒に今回の講座を受講することを決めました。

変革のプロセスを体系的に学ぶことで「気持ちが楽になった」
柊:受講いただいたのは、組織の変革を進めるうえで必要となる「手法(プロセス)」と「在り方(人との向き合い方)」を取り扱うプログラムです。現場で活かせる実践力を養うことを目的とした内容になっていますが、受講いただいて御社の取り組みに生かせると感じた学びや、実践で感じる変化などはありましたか。
前田様:受講する前は、自分自身が経験したことや学んだ知識から、断片的にチェンジマネジメントのことを理解していたと思います。そうした頭の中に存在していた「パーツ」が、講座を受けることで一つにつながり、全体像が見えるようになったというのが、自分にとって大きな変化の一つだと思います。
例えば、講座では「チェンジカーブ(人が変化を受け入れる心理的プロセスをモデル化したもの)」などについての話を聞き、大きな変化に直面した時に誰もがそれを急に受け入れられるわけではないことや、変化を受容するまでには、ショックや怒り、落ち込みなどいろいろな感情の変遷を経ることなどを体系的に理解できました。全体の流れを俯瞰して「これからこんな困難が待ち受けているんだな」と分かったことで、気持ちがすっと楽になった気がします。
それまでは、エンゲージメントサーベイの結果などに一喜一憂してしまうこともありましたが、今はたとえ結果が良くない場合でも「ずっと続くステップの一つなんだ」と冷静に受け止めることができるようになりました。

柊:岡さんはいかがですか。
岡様:私にとって今回の受講は、人事制度を作る上で、自分が何をしなければならないのかを改めて考える良い機会となりました。自分自身、受講前はどうしても制度そのものを作ることばかりを考え、無意識のうちに仕事の枠を作っていたと思います。しかし、人事制度を新たに作る仕事というのは、人が変わり、組織のアウトプットが変わるところまでを成し遂げなければ意味がないんだと気が付きました。受講して、自分がやるべき仕事のスコープが広がった気がしています。
前田さんと同じように、相手の反応に対する理解度も深まりました。人事の担当者として制度設計に関わっていると、どうしても「制度を作る、説明する、浸透させる」というこちら側の事情で変革のプロセスを捉えてしまいます。しかし、相手の立場に立ってみると、変化を受け入れるまでのどの段階にいるのか、一人ひとりフェーズが異なるのだな、と改めて感じています。

メンバーの視座を揃え、チームで変革を進められる体制を
―― 受講した内容を受けて、実務で何か変化はありましたか。 (柊)
岡様:私は人事制度変更のプロジェクトでPMOを担っているのですが、受講後、意識して対面での全体ミーティングを増やしたり、全体のビジョンやプロジェクトの目的を常に共有したり、コミュニケーションを密にするようにしています。
人事担当者やビジネス部門を担当するビジネスパートナーなど、変革を社内に広げていく立場であるプロジェクトメンバーの中でも変革の受け止め方は様々です。この先、全社に変革を広げていくためには、まずはプロジェクトメンバーに理解を広げて、考え方を揃える必要があります。最初は個々のメンバーの話を聞いて「今後やっていけるのか」と不安になることもありましたが、今は一人ひとりの温度感に差があることは当然だとわかり、落ち着いて対応できるようになりました。
後藤様:2026年10月の新たな人事制度の導入に向けて、現在、受講した内容を生かして「Beyond Leadership Session」というセッションを月1回、シニアマネジメントと共に行っています。変革の重要なステークホルダーであるマネジメント層に変革の目的や意図を自分事として捉えてもらい、新しい制度がしっかりと機能することを目指したセッションです。

マネジメント層であっても、誰もが変革を最初からすんなりと受け入れることができるわけではありません。そうした中でも、対応する私たちプロジェクト側のメンバーにチェンジマネジメントの考え方が身に付いたことで、相手のいるフェーズを冷静に見極めることができるようになったと思います。何か打ち手を考える際も、プロジェクト内にチェンジマネジメントに対する考え方が根付いているので、同じ方向を向いて議論ができるようになったと感じています。
柊:メンバー内に共通言語ができているのですね。
後藤様:そうですね。また、トップのサポートがあることのありがたさや重要性も、プロジェクトのメンバーがより実感できるようになったと思います。当社では、社長自身が組織変革に対する強い想いを持ち、役員と従業員が対話するタウンミーティングを企画するなど、積極的にコミュニケーションの先頭に立っています。新たなミッション・バリューを伝える際も、トップダウンで押し付けるのではなく、同じスタンスに立ち、自らの言葉でメッセージを発信しています。
講座を受講したことで、そうしたトップの行動が持つインパクトを、プロジェクトメンバーが体系的に捉えられるようになり、良い循環につながっていると感じています。現在は、変革に関わる人々を立場や階層ごとに捉え、チーム内で役割を分担しながら、各層で変革が進むように取り組んでいます。
今後のご展望について
―― 今後の展望についてお聞かせいただけますか。(柊)
前田様:現在は、まだ変革を成し遂げるための「スタートライン」の段階で、これからもさまざまな困難がやってくると思います。それでも、この先何が待ち受けているのか見通しがつくようになり、相手がどのような状況に置かれているのかを考えながら向き合えるようになったことで、こちらも冷静に前を向いて変革を推進し続ける自信がついたように感じています。
すぐに成果が見えない中で、壁にぶつかりながら続けることは簡単ではありませんが、変革の全体像を理解し、今どのフェーズにいるのかを認識できるようになったことが、大きな後押しになっています。

―― 最後に、皆様と同じように変革に取り組んでいる企業の方たちに、メッセージをお願いできますか。 (柊)
後藤様:チェンジマネジメントは、人事部門に携わる人間にとって欠かせない重要な専門スキルの一つだと思います。ただ、誰か一人がその考え方を理解しているだけでは、組織の中で十分に生かすことはできません。実際に変革を進めていくためには、チームとして共通の理解を持ち、同じ視点で判断や議論ができることが大切だと感じています。
その意味でも、組織変革を計画している方には、ぜひ私たちのようにチームでチェンジマネジメントを学ぶことをおすすめしたいですね。
変革を推進する過程で待ち受ける困難やそれにどう対応すべきかをチームとして理解し、視座を揃えることで、壁にぶつかっても冷静に、みんなで同じゴールを目指せるようになります。私たちもまだ変革の途中にありますが、チェンジマネジメントの知見を生かしながら、より良い組織づくりに向けて取り組みを続けていきたいと思います。
